木製の鍵盤がついた弦楽器です。右手はバイオリンやチェロのような弓で弾き、共鳴弦（弦には触れずに音に共鳴し響く）があるのが特徴で、目の前で聞くと木の鍵盤がカタカタいう音、共鳴弦の澄んだ音色は耳にとても心地よく響きます。
古くは14世紀の教会のレリーフでもみられ、また似たような楽器は中世ヨーロッパ各地で教会の壁画などで痕跡が見られます。ですが、伝統楽器として定着したのはスウェーデンのウップランド地方。この地のみで演奏の歴史があり現在まで発展してきた楽器なのです。
1900年代に入り弾き手がほとんどいなくなるという危機的状況を乗り越え、その魅力は今や世界中の人々を虜にしています。

「バイオリンとフィドルは違う楽器なの？」という質問を受けることがあります。フィドルは、バイオリンの俗語で全く同じ楽器です。俗語と聞くとますます「？」と思うかもしれません。パーカッションの類をまとめて「たいこ」と総称したり、トランペットを親しみをこめて「ラッパ」と呼ぶ感覚に少し似ているように思えます。クラシック音楽や高価で上品な楽器というイメージと違い、居酒屋や屋外の祭などで自由に演奏する楽器として英語ではフィドル、fiddleと呼びます。このCDでは、軽快なアレンジが多く、バイオリンという日本語からイメージするものと違うためフィドルとしました。

ただし、スウェーデンではバイオリンもフィドルも、クラシック音楽だろうと民俗音楽だろうと、区別せず「フィオール、fiol」です。 本来は、どんな音楽も同じ「音楽」です。あえて区別する時、それは、目にみえない境界線を自分で引いているということ。つまり、北欧をはじめスウェーデンには、音楽をジャンルで線引きする意識はなく、自然に生活に溶け込んでいるのでしょう。

スウェーデンの民俗音楽で使われる主な楽器は、このバイオリンです。
またバグパイプも一部みられますが、古くから現存するものはありません。スウェーデンの伝統音楽奏者が古い記録から研究し、こうであったろうと再現したこのバグパイプは、有名なスコットランドのバグパイプとは違って優しい音色です。
その他、伝統楽器には、リコーダーや柳笛、ニッケルハルパなどがあります。
Pastral musicと言う、放牧で羊飼いや牛飼いが歌う独特な歌など興味深いものも多くあります。
現代では伝統にとらわれず、ギター、アコーディオン、サックス、ピアノなど自由な組み合わせで楽しまれています。