スウェーデン、ダーラナ地方の馬の置物、ダーラナ・ホース（スウェーデン語でダーラ・ヘスト）は「その家に幸せを運ぶ」と言い伝えられています。

スウェーデンでは、紀元前より馬は人々の暮らしに重要でした。力、勇気、信頼、知、品格を象徴し、また北欧神話にも登場する神聖な生き物です。
北欧の長く暗い冬の森での仕事を想像すると、孤独でつらい作業の中、馬はいつも主人に誠実で重い荷物を運び、スウェーデンの森で働く労働者には仲間のような存在だったでしょう。
1600年代には既に馬の置物はマーケットで売られ、1700年代には今のダーラナホースの形になったそうです。
この頃、山深く森が広がるこのダーラナ地方で、一日の仕事を終えた木こりが子供のために作り、子供のおもちゃとして広がったのだとか。
そして、現在みられる装飾のペイントは1800年代に流行していた「クルビッツ」の影響を受け装飾が描かれるようになりました。赤い色の馬が一番有名ですが、実はダーラナ地方の中でも細かく地域によって色やスタイルに違いがあるんですよ。例えばレトヴィックという小さな町のダーラナ・ホースは、スッキリやせ形でグレーです。
こうした地域に根差したダーラナホースは、1939年の万国博覧会を経て、今や世界中で愛されるようになったのです。

1800年代、ダーラナ地方では盛んに家具や壁、天井などに花や植物をモチーフにした装飾画をペイントしていました。クルビッツは、ダーラ・モルニング（ダーラナ・ペインティング）ともいいます。描かれたのは、装飾としてデフォルメされた想像上の植物で、大胆な色柄でとても美しくスウェーデンらしい伝統図柄です。

お隣ノルウェーではローズマリングと言い同じように流行していましたが、ノルウェーの場合は、デザインやスタイルは地域によって違いがあります。

スウェーデン、ノルウェー、違いはあっても共通するのは、どちらも装飾にお金のかけられない貧しい農村で発展したこと。とても興味深いですね。

その後、移民によりこのフォークアートはアメリカへ渡り発展し、現在ではリアルな花からクマなど自由に描くトールペイントとして、日本でも親しまれるようになりました。